みぃのしっぽは、よく動くしっぽでした。
うれしいとき。
楽しいとき。
大好きな場所に着いたとき。
ふわふわと大きく揺れて、
まるで床を掃くほうきみたいだったので、
わたしはこっそり「しっぽほうき」と呼んでいました。
いつもの河原に着くと、
遠くにいるワン友達のママさんたちが、そのしっぽを見て
「あ、みぃちゃん来たな」
と思ってくれていたそうです。
そこは、大きな河原の芝生。
お散歩する犬同士、目が合えば挨拶しているうちに知り合った人たちが、
なんとなく集まる場所でした。
犬の名前は知っていても、
飼い主さんの名前は知らない。
どんな仕事をしているかも知らない。
けれど顔を合わせれば自然に笑って、
犬たちはそれぞれ好きなように遊んでいました。
みぃも、この河原が大好きでした。
ボールを追いかけて、風のように走って、ゴロゴロと体をすりつけ
しっぽほうきを揺らしながら、芝生を駆けまわっていました。
そして、犬生でたった一匹だけ。
気の合うダックスの女の子がいました。
やわらかなレッドの毛をした子で、
会うとどちらからともなく走り出していました。
みぃが追いかけっこをしたのは、あとにも先にもその子だけです。
会うとすぐ、どちらからともなく走り出して。
まるで「今日も遊ぼう」って約束していたみたいでした。
一方そのころ、飼い主であるわたしはというと
大きなバーニーズには何度も転がされ、
なぜか柴犬には、よく電柱と間違われました。
気づくと、ズボンの裾にそっとマーキングされていて。
すると、それに気づいたみぃがやってきて、
くんくん、と確かめたあと、なんとも言えない哀れむような目でこちらを見るのです。
「あ~~またやられてる」
そう言いたげな顔でした。

楽しい時間は、ずっと続いていました。
みんなでバーベキューをしたり、
犬と暮らしていると出てくる小さな悩みを相談しあったり。
みぃにアレルギーがあることを知って、
わざわざ食べられるおやつを探して持ってきてくださる方もいました。
「みぃはおやつを知らないから、大丈夫なんですよ」
そうお伝えしても、
「わたしがあげたいから」
と笑ってくださって。
そのやさしさが、うれしくて。
あの河原には、
名前や肩書きを超えた、あたたかな時間が流れていました。
みぃのしっぽほうきが揺れるたび、
またひとつ、ご縁が結ばれていたのかもしれません。
